神居古潭石-III, Kamui Cotan Seki
神居古潭石-III
神居古潭石を紹介するページもこれでもう3頁目に突入しました。これもひとえに神居古潭石に魅力があり、とどまることなく収集してしまった結果ではあります。
何に惹きつけられるかといえば、何よりやはり艶のある肌合です。油石と呼ばれるほど、潤沢な光沢が特徴の神居古潭石ですが、やはり日々愛でて触れてより輝く姿を眺めるのは何とも言えない喜びがそこには存在します。
神居古潭石 - 輝緑
こちらは神居水石庵さんからいただいた神居古潭石の輝緑です。
この石を知るまでは輝緑たるや何のことか分からなかったのですが、この石で初めて輝緑を知りました。 神居水石庵さんによれば、古潭石の中で一番美しく艶があり肌の滑らかなのが輝緑石とのこと。 その上この石の場合、小さいのに山容景石が良い石です。
実際は手のひら大なのですが、確かにそれを感じさせないほど存在感があります。 ちなみに神居古潭石は小さくなればなるほど形の優れたものはなかなかないとのことでもあります。
さて、話を戻して輝緑。この石の場合もそうですが、ひとつの石まるごと輝緑というよりは、輝緑が緑泥に混ざっていると言った方が正解かもしれません。
ひとつの石まるごと輝緑のものは、本輝緑と呼ばれさらに別格扱いされることからも、大抵の輝緑は緑泥と混在しているようです。
角度を変えて見ると、より緑色が濃く輝く箇所が帯のように流れているさまが分るでしょうか?
それにしても動かない石を肉眼で見たように写すのはなんと難しいことなのでしょうか。
神居古潭石 - 例外石
こちらは神居古潭石の例外石です。何が例外かといえば、神居古潭七石や神居古潭十石にカテゴライズされないという意味で例外石としたものです。
ちなみに佐治川石七石や佐治川石十石という言葉もありますが、○○石七石や十石というのは、水石の産地における石種の多さを褒めたたえる美称です。
(往々にして、どの石種が七石や十石かは曖昧なことが多いのですが…)いずれにせよそういった美称が付く産地は大規模な変成帯付近だったりして、実際他の産地では見られないような それは変わった石が見つかったりします。
話を戻して、こちらの神居古潭石ですが、何がちょっと違うかといえば、まずその色。 半分が緑っぽく、もう半分が青黒く見えます。 (心なしか太陽光下と蛍光灯下で若干色の感じが違って見える気もします)
続いて、ジャグレとも違うのですが、石肌の荒い個所。 全体に淡い緑色ですが、角度によってキラキラします。よく見ると、微小な緑簾石(りょくれんせき、エピドート)が付着しているようです。
これを見ると、水石というより鉱物の標本といった方が近いのかもしれませんが、それでいて遠山の形をしていますし、水石とカテゴライズしても差し支えないとは思います。もちろん石肌の荒い個所があるため、綺麗な稜線を描いているとは言えませんが、荒々しいところがかえって本当の自然の山のようでもあり、よい山水景石です。
神居古潭石 - 赤古潭石
神居古潭石の赤は、チャートか碧玉のいずれかと思っていたのですが、そればかりではないことを知りました。
それはこちらの赤古潭石との出合いによって判明したのですが、むしろ本物というより、 質の良い赤古潭石は鉱物的にもう一つ別の石なのかもしれません。
その鉱物名は石英片岩。 赤色のチャートが広域変成作用により地下深部で剪断応力を受けて再結晶したものです。 鉱物が方向性をもって配列し、片理と呼ばれる、面状構造を持ちます。
こちらの赤古潭石は、神居水石庵さんからいただいたものですが、神居水石庵さんによると赤古潭石は、神居古潭石のなかで一番少なく、形状の優れたものはなかなか見つからないそうです。 そして、赤古潭石には、濃い赤色に茶色が交じるものと、こちらの石のように淡い赤色(ピンク系)のものがあるそうで、ほとんどのピンク系には白い石英が入るそうです。
このお話からするとおそらく濃い色がチャート、ピンク系が石英片岩ではないかと思います。
こちらの赤古潭石は形がよく姿石として眺められます。 また、石英の筋がいくつか入っていますが、それがまた抽象画のようで紋様石としても観れます。
クローズアップすると、片理の線が平行にあるのが分かります。
片理がさらに分かりやすいのが下の石です:
こちらの石は、神居古潭変成帯の石英片岩で、赤色チャートが変成作用を受けて石英片岩になったものの標本です。 ですので、姿石と鉱物学的には同じ石となります。
ただし、標本の方は割れたばかりのようで荒々しいのに対し、姿石の方は川擦れが効いて荒々しさと滑らかさを併せ持つ独特の 見た目と触り心地になっています。