産地不明石について, About unknown stones
産地不明石について
水石全盛期の昭和30年~40年頃、有名どころの河川は探石銀座の様相を呈していたというから相当の数の石々が探石されたと想像できる。 当然のことながらそういったブームがあれば無名の河川からも探石されたであろうし、さらには美石を中心に海外からも輸入されたという。
さらには平安時代末期から続くとされる水石の歴史を考えてみても、想像を超える数の石々が人の手を介し鑑賞の用に供された訳で、 従って由来の定かでない石々が世の中に存在するのは必然といえる。
石に歴史あり、人はそれを知らぬという訳である。
ここではそういった産地不明の石について記したい。
中国浮雕石(ちゅうごくふうちょうせき)
この石はオークションで入手した鑑賞石であり、埼玉県の骨董品を扱う方からいただいた。
年輪のような模様が独特で石質は硬質。滑らかな手触りである。 このような滑らかな石肌のまま産するのか、人工的に研磨したのかは分からない。
自然に産した石であれば海石であろうし、人工的に研磨したものだとすればバレル研磨だろう。 入手した際に比較的丸みを帯びた石英のような小石がひとつ挟まっていたため、 それが研磨材とすればバレル研磨だろう。しかし、その小石を取り除いた底には泥のようなものがあったため海石かもしれない。
いずれにしてもこのような石はこれまで見たことがなく、長崎は対馬の「対馬渦紋石(つしまかもんせき)」のようでもあるがその特徴である渦模様が見られない。
その後いろいろと調べると、松浦有成氏の著書である水石入門マニュアルに「中国浮雕石 Chugoku-Fusui-ishi」としてよく似た石があることを知った。
ちなみに「雕」という字は掘る、刻むという意味があり、浮雕でレリーフ(レリーフ)となる。
浮雕石というのはその年輪のような独特の模様がレリーフのようであることに由来すると思われる。
なかなかよい表現だ。
これまで調べた中で水石入門マニュアルの書籍内以外にこのような石を見つけられなかったため、国内には数えるほどしか入ってきていないか、またはそもそも希少な石かのいずれかだと思われる。