川ずれについて
川ずれ
水石で石の肌を形容する言葉に「川ずれ」がある。
これは石が川ですれて(こすれて)丸みをおびた状態を云うため、漢字をあてるとすれば「擦れる」や「摩れる」が適当だろう。 従って「川擦れ」や「川摩れ」と書くのであろうが、川ずれとひらがなで書かれることも多い。
さて、この川ずれ。 川で擦れて丸まった石の何がよいのかと思われるかもしれないので少し弁解したい(愛石家の妄言かもしれないが)。
川ずれを愉しめる石というのは何より硬質である必要がある。
柔らかい石の場合(ほとんどが緻密ではない)、川ずれしてもただの丸い石となって石肌もザラザラするだけで何の面白みもないのである。 一方、硬質な石というのは川ずれによって角が取れ丸みをおびるものの硬く緻密が故の艶がでる。光の加減で摩耗した箇所が鈍く光を反射する様には気品さえ感じられるのである。
もともと水石は形さえよければどんな石でもよいというものではなく、ある程度の硬さが必要である。愛石家は折に石に触れ、爪で弾きキンキンと鳴る清音を愉しみ、すべすべの肌を撫で癒されるのだが、川ずれで丸みを持った肌から感じられる形状的な柔らかさと、質感による硬さの両方に恍惚とするのである。
このあたりの感覚というか感性というのは、石好きでこそはじめて共感が得られるのであって、やはり一般には妄言だとみなされることだろう。
石を撫でて恍惚とする?
あなた変態ですか?と云われかねない世の中なのである。
丸みを帯びながらも奥底からにじみ出る硬い質感が分かるだろうか。